リスニングができない主な原因とは⁉
語学学習者の多くの方々がリスニングに苦労されているのではないでしょうか。語学学習に取り組むからには、リスニング力を上げて、会話ができるようになりたいですよね。これまでの日本の英語教育ではリスニングよりも、文法、単語、精読などに比重が置かれていたためか、「リスニングをどう鍛えて良いか分からない」といった意見をよく伺います。また、「ずっと練習しているけど伸び悩んでいる」と仰る方もいらっしゃいます。
ですが、リスニングにつまづく主な原因はいくつかに絞られ、それぞれ対策をすることができます。
- 認識できない発音がある
- 音声の速さに、理解スピードが追いついていけない
- 語彙力が足りていない(上級者であっても)
皆さんは、リスニングが難しいと感じるその理由について、分析されていますでしょうか。こちらを読んでいただくと、外国語のリスニング力を向上させるための脳のメカニズムをご理解いただけると思います。いつものリスニングの練習に加えて、下記に説明するコツも取り入れてみて下さい。
「認識できない発音がある」問題の対処方法
● リスニングのために、まずは発音練習をしましょう!
リスニングができない場合、認識できない音があるのかもしれません。そこで、学習対象言語の発音練習をしてみて下さい。皆さんは発音の練習をされていますでしょうか。
「発音の練習をしても、どうせネイティブのように話せないし、発音が悪くても通じれば良いのでは?」という考えで、発音練習をしないという人が多いようです。

ですが、自分が発音できない音は、見事なくらい聞き取れないんです。これは脳が音を処理して、言葉を理解する時に起きる「カクテルパーティ効果」のせいなんです。
カクテルパーティ効果とは、周りの音の中の雑音をフィルター処理し、聞きたい人の声だけを認識する脳の処理機能の事です。人が多いパーティの中でも話し相手の声だけが認識できたりした経験はないでしょうか。これは脳が音を取捨選択して処理しているからです。
これは日常生活では良いのですが、外国語の音を聴く時には問題となります。というのは、外国語の音の中で日本語にない音は、脳のフィルターが雑音として無視したり、よく似た日本語の音に置き換えてしまいます。そこで、発音練習が重要になってきます。
学習対象の言語の音も発音できるようになると、リスニングをした時に、脳が雑音でなく、意味合いのある音として認識処理するようになります。発音自体を綺麗にするだけでなく、リスニングのためにも発音練習が必要なんです。
● ヨーロッパ系言語では、特に子音の発音を意識しましょう!
発音練習の必要性について書かせていただきましたが、実は日本人学習者が特に注意するポイントがあります。それは、「子音を意識して強く発音すべき」ということです。
というのは、実は日本人とヨーロッパ系言語話者では、話す時に子音(b、d、g、k、p、s、tなど)と母音(a、i、u、e、oなど)の相対的な強さが異なります。
- 日本語話者 :子音より母音が強い
- ヨーロッパ系言語話者 :母音より子音が強い
実際に、”Good morning.”という音声で確認してみましょう。
- “Good”のアクセントがある音節”Goo”の子音”G”をハッキリと発音
- ”morning”のアクセントがある音節”mor”の子音”M”をハッキリと発音
- アクセントのない”ing”は弱い
- “ing”の前の”n”の方が強い
全ての母音を強く発音していく日本語とは異なっています。日本人が英語やドイツ語などを話す時には、子音は大げさなくらいに強く発音した方が良いようです。
特に子音のb、p、t、wなどは、爆発音と説明する人もいるくらいです。また、c、s、f、thなどは、強く吐く息を利用します。
以前、英語を綺麗に発音される日本人の方に発音の練習方法を伺ってみたら、「一日にアルファベット1つを選び、例えば”b”なら、家事をしながら、ひたすら「ブッブッブッ」と練習する」と仰っていました。日本人にとって子音の発音練習は、このくらい気合が必要なんです。
● 文のイントネーションにも注目しよう!
日本人がヨーロッパ系言語の音を聞き取れない理由として、イントネーションの問題もあります。
日本語にはあまり抑揚がないという話を聞いたことがないでしょうか。一方で、ヨーロッパ系の言語は一つの文の中で強弱がハッキリとしていて、抑揚が豊かです。実は、この強弱が日本人にとって、リスニングの際に問題となります。
というのは、日本語の抑揚のない発音に慣れている私達の脳は、英語などを聴く場合に抑揚の強い部分のみを拾ってしまい、弱い部分はフィルタリングをして雑音としてはじいてしまいます。
実際に、日本語のこちらの文章を確認してみましょう。1つ1つの音(特に母音)を強く発音していく日本語の文は、強弱の波があまりありません。
幸福は香水のごときものである。 人に振りかけると、自分にも必ずかかる。
ラルフ・ウォルドー・エマーソン
次に抑揚のある英語の文を確認してみましょう。文の中の動詞や名詞など、意味的に強調すべき部分(下線)は強く発音されます。一方で、それ以外の部分は弱く、早口になります。
Happiness is a perfume you cannot pour on others without getting a few drops on yourself.
Ralph Waldo Emerson
こちらの英語の音声は聞き取れましたでしょうか。下線の部分はハッキリと発音されるので聞き取り易いですが、それ以外の抑揚が弱い部分は聞き取りにくいのではないでしょうか。抑揚があまりない日本語を話す私達の場合、この弱く速く話す部分が聞き取れないという現象が起きます。”without gettingt”の部分は聞き取りにくいのではないでしょうか。
これを克服するためには、外国語(ヨーロッパ系言語)の文の抑揚を真似て話し、脳に強弱のパターンに慣れさせる必要があります。言語の1つ1つの音そのものだけでなく、抑揚にも注目して、マネして発音練習をしてみましょう。
「音声の速さに、理解スピードが追いついていけない」問題の対処法
発音練習もしているし、文法や語彙力もあるのに、リスニングが難しいと感じている方は、文章の理解スピードが追いついていないのかもしれません。このような場合は、多読に取り組んでみて下さい。多読をしていると、読解力が上がり、理解スピードが上がっていきます。
特にヨーロッパ系言語の文は動詞や名詞をはじめとして単語の並びが、日本語とは異なるため、初学者は特に、いわゆる戻り読みをしてしまいがちです。
(戻り読みとは、文頭の主語を確認し、文後半にある目的語を見てから、文中の動詞を確認して、日本語の文の並びに合わせた読み方です。)
ですが、多読で読解に慣れてくると、その言語の文中の単語の並びのままに読んで理解できるようになります。聞いたままに理解していく必要があるリスニングにも有利です。
多読のコツや効果については、こちらの記事に纏めていますので、宜しければご覧ください。

「語彙力が足りていない」問題の対処法
上級者であっても、リスニングで伸び悩んでいる方は多いです。よくお話を聞いていると、これまでにテストのための勉強も十分取り組まれており、日頃、ニュース動画もチェックしていて、知っている単語数は多いのですが、映画や日常会話での音が聞き取れない、とか。
こういった方の場合、実は「日常会話での語彙力」が足りていない場合が多いです。ニュースをいくら努力してチェックしていても、この手の語彙力は伸びません。日本語でいうと文章のみで使われる熟語ばかりを覚えている感じでしょうか。
このようなケースでは、FacebookやXで書き込まれる日常会話での表現が満載のページをチェックしてみて下さい。そして、覚えた表現を自分でも使ってみましょう。
効果的なリスニングの総仕上げ:ディクテーション
それでは、これまで解説してきた、リスニングの悩みへの対処(発音やイントネーションの練習、多読など)をしていただいた後での、リスニング練習の総仕上げとしてお薦めなのが「ディクテーション」です。文を聞き取って、書き取りをするディクテーションをやってみると、細かな部分の聞き取りが意外と難しい事が分かります。
例えば、英語の”them”、”him”、”her”などは、文中では”em”、”im”、”er”などと省略されたり、”a”、”an”、”and”なども速く曖昧に発音されることが多いです。また、”going to”、”want to”、”did you”などが、リエゾンするといったことはご存知の方が多いのではないでしょうか。

ディクテーションをすると、どの部分の聞き取りが自分にとって難しいのか、が一目瞭然となります。自分で書き取りをした文と、実際のスクリプトを比較し、何故、違った音に聞こえているのかを、その都度、分析をしてみて下さい。この分析が重要です。
抑揚の弱い部分の発音は速く、且つ、曖昧になりがちです。曖昧になった時の音の変化について、分析を繰り返すことで意識できるようになります。曖昧どころか、音が聞こえない場合もありますが、その場合は「音の空白」があり、空白の前後の文のリズムのようなものも感じられるかもしれません。
聞き流しだけでも、外国語の文章のだいたいの文意を掴めるレベルまでは上達できるようになるかもしれませんが、上記のようなディクテーションでの分析をすると細部まで聞き取れるようになります。折角、語学学習をするなら、文の微妙なニュアンスまできっちりと理解できるようになりたいですよね。
無料でディクテーションができるサイトがこちらです。短めの音声(1~2文)を何度も繰り返し再生でき、上記に書いたような分析に最適です。レベルが選択できて、スピードを遅くするモードも付いています。
https://speechling.com/dictation/
ディクテーションは毎日、10分程取り組むだけでも効果が出ます。聞き取れる文がどんどん増えてくるのが実感できて、楽しくなってくると思います。
まとめと今後の学習へのアドバイス
ここまで、以下のようなトレーニングについてご紹介してきました。
- 発音練習により、音を聞き取れるようになる
- 文のイントネーションを真似て話す練習をすることで、抑揚の弱い部分も聞き取れるようになる
- 多読に取り組み、文章の理解スピードを上げることで、リスニングでも速さに付いていけるようになる
- ディクテーションにより、自分が聞き取れない部分の分析をする
同時に全てに取り組むのは難しいかもしれませんが、ご自身のリスニング上の課題について分析し、優先順位を決めてトレーニングをしてみて下さい。以下の点も合わせて続けていけば必ず成果が出ます。
- 継続して取り組むこと
1日に15分あるいは30分などと決めて、取り組みましょう。毎日少しずつでも聞く習慣を作ることで、耳が慣れていきます。 - 自分が楽しめるコンテンツを選ぶこと
ご自身が興味を持てる内容の場合、脳が積極的に情報を取りに行こうとする状態になります。そのため、学んだ内容がより効率的に記憶として定着します。(脳科学では心理的エンゲージメントと言われます。)
語学学習を楽しみながら続けていきましょう。







