英語学習のあるべき順序
社会人になってからも英語学習を続けたい、あるいは、中学や高校の英語の復習から学習をやり直したいという方は多いとおもいます。語学と一言で言っても、単語や文法を覚えるところから始まり、読解力にもリスニング力で、会話練習もあり、やる事が色々とあります。
2000年頃までは文法や単語の学習や精読が中心だったこともあり、「英会話ができるようになりたいけど、どう取り組めば良いか分からない」といった方もいらっしゃいます。
ヒッグス曲線が示す、語学の順序とは?
じつは、あるべき語学学習の順序についての体系的な研究結果があります。言語学者のテオドール・ヒッグス(Theodore Higgs)は、アメリカ国務省の外国語教育機関で研究を行い、語学レベル別にどんな学習に比重を置くべきかを、ヒッグス曲線で示しました。

こちらの研究によれば、語学の順序は以下となります。
- 語彙力は語学の土台なので、まず初めに伸ばす
- 文法は初級レベルから始め、中級レベルで集中的に取り組む
- 発音はリスニング力にも繋がるため、最初からトレーニングをする
- 会話(流暢さ)は基礎的な単語や文法力が付いた後の中級レベルから本格的に始める
こちらの研究について、以下の記事に詳細を説明していますので、宜しければご覧ください。

社会人は英会話をすれば、会話できるようになる⁉
上記のヒッグス曲線で、「会話は中級レベルから本格的に取り組むべき」とされているのには、理由があります。文法や単語を十分に学習しないままで、会話練習をした場合、ブロークンな英語表現でも相手に通じてしまう事があり、この成功体験が強く記憶されることで、ブロークンなスタイルが定着してしまいます。これが中級レベル以降で伸び悩む原因となります。
そこで、多くの方々が仰るのが、「日本人の場合、中学から大学まで計10年程、英語を十分に勉強しているため、英会話から始めて良いのでは?」ということです。実際に日本の学校での英語学習の量は会話を始めるのに十分なのでしょうか。

ここで興味深いデータがあります。中学から高校までの英語の授業時間は少なくとも850時間程度とされています。(文部科学省 学習指導要綱 2017年改訂(中学)、2018年改訂(高校)大学での授業時間数も含めると1200時間程度でしょうか。それに対して、日本人が英語習得に必要な授業時間は2200時間と言われています。
2200時間の根拠というのは、これもアメリカ国務省の研究からです。国務省ではアメリカ人が各国語を習得するために必要な授業時間数について研究しました。これによると、英語と単語や文法に共通性のあるイタリア語やフランス語の習得に必要な時間数は600~750時間であるのに対し、日本語や韓国語は2200時間です。
| 必要な授業時間数 | |
| イタリア語、フランス語 | 600~750時間 |
| 日本語、韓国語 | 2200時間 |
この結果から、日本人が英語を習得する際にも2200時間程度の授業時間が必要と推定されます。つまり、日本人の社会人は、大学を出ていても、まだ1000時間程度の授業時間数が必要という計算になります。
英語学習における避けるべき順序
そして、日本の学校での英語教育には片寄りがあります。英語の授業では、文法や単語を正確に記憶する、精読で正確に英語の文章を訳すといった事を中心に多くの方々が学習されてきたのではないでしょうか。第二言語習得論でも重要と言われている多読多聴や発音などは、日本の授業ではあまり扱ってきていません。
そのため、社会人になってからも英語学習を続けようという方々も、発音や多読多聴の重要性を見落としがちなのではないでしょうか。
◆ NGな学集順序:発音を無視した語彙学習
日本語での漢字が象形文字なのに対し、英語のアルファベットは表音文字です。発音を学ぶことで単語の綴りに対する感覚が身に付きます。英語の語彙学習と発音練習はセットで行うべきです。
そして、先にも書きましたが、正しい発音はリスニング力のベースとなります。発音練習がリスニングの基礎となるメカニズムについては、以下の記事に説明していますので、宜しければご覧ください。

◆ NGな順序:インプット(多読多聴)をとばしてのアウトプット(英作文、英会話)
英語学習において、多読多聴も重要です。文法といったルールや、語彙といった材料を学ぶだけでは、アウトプット(英作文、英会話)をするための十分な基礎力とはなりません。多読多聴により大量の文章の中で、同じ単語や構文に何度も出会い、その表現に何度も触れることで、自然な表現力、言語の運用力が身に付きます。簡単なテキストで良いので、積極的に多読多聴にも取り組んでいきましょう。
多読の効果やコツについては、こちらの記事に纏めました。宜しければこちらもご覧ください。

まとめ
英語を含め、語学学習には理論的な順序があります。特に日本の学校教育では、文法や単語、精読(短い文章を正確に訳す)が中心で、発音練習や多読多聴があまり取り入れられていないところが多いようです。発音練習や多読多聴も取り入れつつ、学習計画を立ててみて下さい。
また、英会話から始めようという方々がいらっしゃいますが、正しい構文や自然な表現が使えていますでしょうか。会話だけでなく、文法や単語の学習や多読も取り入れることをお薦めします。
英語学習では復習も大事です。学習すべき内容が膨大にあると思うと、焦って学習を前に前に進めることばかり考えがちで、意外と復習の方がおろそかになっていないでしょうか。(20代の時の私はそうでした。)ですが、語学学習は前に進めていくよりも、復習の方が大事とも言われます。同じ内容を繰り返し見直すことによって、確実に記憶に定着させることも学習計画に入れてみて下さい。
英語学習は長期の大事業になると思いますが、英語を通して新しい文化に触れられる充実した時間にもなるかと思います。皆さんの英語習得のプロセスが実りあるものでありますように!







