皆さんは、ドイツ語学習に多読を取り入れていらっしゃいますでしょうか。多読とは、大量の文章を読むことで、その言語のセンスを身に付け、運用力を高めるアプローチです。第二言語習得論という研究分野でも多読の重要性が指摘されています。
幸運にも、ドイツは魅力的な児童文学などが豊富で、易しめのドイツ語であっても大人でも読み応えのある作品が豊富です。さすがに哲学の国なだけあって、児童文学であっても社会問題に切り込むようなものも多々あります。ドイツ文学での多読を通じて、ドイツ語学習の時間が充実したものになるのではないでしょうか。
今回は多読の効果と、ドイツ語でのお薦めのテキストをご紹介します。
目次
ドイツ語多読の魅力と効果
多読とは? その基本概念
多読により大量の文章を読みこなしていくうちに、ドイツ語への抵抗感がなくなり、読解力や語彙力、運用力が自然と身に付いていきます。
多読には、知っている単語が98%程度のテキストを選ぶと良いと言われています。(小説の1ページに300語程度の単語があるとすれば、そのうち分からない単語が6語程度といったところでしょうか。)多少意味が分からなくても大意が取れればよいという感覚で、とにかく読み進めて量をこなします。但し、ある単語の意味が分からないと、先へ進めない時は、辞書を使います。
易しいテキストを選べば良いのですから、基本的な文法や単語を覚えたドイツ語初心者も気軽に始められます。興味が持てる内容のものを選んで、楽しく続けるのがコツです。
ドイツ語学習における多読のメリット
それでは、大量の文章を読んでいく「多読」にはにどんな効果があるのでしょうか。第二言語習得論という研究分野では、主に以下の効果が指摘されています。
● ドイツ語の自然な言語運用能力が身に付く
語学は、文法といったルールと、語彙といった材料をひたすら勉強すれば身に付くといったものではありません。日本語でも場面に応じた言い回しなどが沢山あります。また、ドイツ語レベルが上級に近づくほど、場面に応じて表現のニュアンスを使い分ける必要がありますが、これはやはり多読によって大量のドイツ語に触れてこそ可能になります。
● 文章の理解スピードが上がる、なのでリスニング力も付く
そして、ドイツ語の文章を大量に読んでいると、どんどん理解スピードが上がっていきます。これは読解に有利であるだけでなく、リスニング力にも繋がります。何故かというと、リスニングの際に、やはり自分の理解スピード以上の速さのドイツ語の音声には付いていけません。リスニングを伸ばしたいという方も、多読は必須となります。
● 基本的な単語やフレーズの運用能力が身に付く
多読により、大量のドイツ語の文章を読んでいくと、基本的な単語に何度も出会うことになります。基本的な単語というと、例えば動詞の"machen"など、作る、もたらす、実行する、扱う、など様々な意味があります。
大量の文章の中で、基本的な単語の多様な使われ方に触れる事で、単語の核となる意味が感覚的にイメージできるようになります。これにより、自分で作文や会話をする際にも自信を持って、単語やフレーズを使えるようになります。また、分からない単語に出会っても、文脈からその意味を予想することができるようになります。多読は単語力を養う上でも、最強のアプローチとなります。
第二言語習得論が謳う多読の効果について、詳しくは↓こちらの記事も合わせてご覧ください。
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おすすめのドイツ語書籍
幸運なことにドイツ語では、ドイツ語学習初級者にも魅力的なテキストが沢山あります。特にドイツは大人にとっても楽しめる児童文学の宝庫です。ドイツの児童文学や、その他多読にお薦めの本をご紹介します。
- MOMO ー Michael Ende (モモ ー ミヒャエル・エンデ)
ご存知の通り、児童文学の傑作です。経済に深い関心があったエンデは、この小説に資本主義への批判を織り込んでいます。
灰色の男達がモモを追跡するものの、どんなに急いでも、ゆっくりと歩くモモに追いつけないという場面が出てきます。これは、世界恐慌時にあるオールトリアの町で利子により価値が増えるのではなく、マイナスの利子によって価値が減じていく通貨を導入したところ、その町だけ景気が良くなったという話からエンデがヒントを得たと言われています。
冒頭の灰色の男達によって人々が搾取される様子は、新自由主義下の現代に生きる我々に迫るものがあります。
- Die Konferenz der Tiere ー Erich Kästner (どうぶつ会議 ー エーリッヒ・ケストナー)
ドイツの児童文学作家ケストナーの傑作。人間の子供達のために世界大戦を止めるべく、動物達が会議を開催。動物ならではのストライキを駆使して、人間たちに決断を迫ります。
児童文学を通して、社会問題に切り込んだケストナーらしい作品です。ケストナーの小説は他にも、「Das doppelte Lottchen(二人のロッテ)」、「Das fliegende Klassenzimmer(飛ぶ教室)」など、日本でも有名な作品が沢山あります。子供の頃にケストナーの作品を読んだという方もおられるのではないでしょうか。ドイツ語で読み直すと新しい発見があるかもしれません。
- 漫画「ASTERIX」シリーズ
ヨーロッパでのロングセラーである漫画「ASTERIX」シリーズ。(初版は1959年) これは官僚的組織・古代ローマ軍と、ガリア人・アステリックス達の戦いの物語です。「これを読めば、ヨーロピアン・ジョークが理解できるようになる」とドイツ人達に薦められました。
アステリックス達がヨーロッパ各地で活躍します。各国の歴史や文化、その国の人々のステレオタイプを、ジョークとして織り込んでいて、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語などのヨーロッパ系言語の学習に取り組む方々には、是非読んでいただきたい漫画です。
- 日本の漫画のドイツ語版
日本の漫画をドイツ語で読むのもお薦めです。漫画はエンターテイメントとしての完成度が高く、先が気になって、ドイツ語でもとにかく読み進めたくなります。絵が理解を助けてくれるので、単語のニュアンスを理解するのにも最高の素材です。
また、文量は小説ほど多くないので読破し易く、「一冊分のストーリーが理解できた」という達成感から、「もっと読もう」というモチベーションに繋がります。
「デスノート」のような有名な漫画ですと、ドイツ語版も日本のアマゾンで買えるようですね。
- 村上春樹の小説のドイツ語版
英語やフランス語を勉強してきたドイツ人達に多読用の本として薦められたのが、村上春樹の小説です。何気ない会話を中心に物語が進むため、平易な文体で、且つ、リズム感があり、語学学習者にも読み易いです。
村上春樹はドイツ人達にも絶大な人気があり、彼らとの話題作りのためにも如何でしょうか。「アンダーグラウンド」や「1Q84」を読んだというドイツ人も多く、90年代の地下鉄サリン事件について、ドイツ人達から質問されたことがありました。
多読を楽しむためのヒント
ここでは、あらためて多読用の本の選び方についてご紹介します。
- 語彙や文法を理解して、スラスラと読めるものを選ぶ
(知っている単語が98%程度のもの) - 興味があるものを選ぶ
あまりに簡単なものでは、語学力向上に繋がらないのでは、と不安になる方もおられると思います。ですが、多読の目的は、大量のドイツ語のシャワーを浴びることです。続けていけば、必ずこちらの記事にあるような効果が表れますので、安心して易しめのテキストを選んでください。
また、毎日30分、あるいは1時間ほど多読をするなどルールを決めて継続しましょう。私の場合は、数か月ほど続けた後で理解スピードが上がり、文章の方から勝手に目に飛び込んでくる感覚が出てきました。ここまで来るとドイツ語学習が病みつきになります。
多読は、ドイツ語を通じてその文化に触れられるという、語学の醍醐味が最大限、味わえる取り組みとなります。是非、興味のあるテキストを選んで楽しんで続けて下さい。
まとめ
最後に多読の効果について、あらためて纏めてみます。
- ドイツ語の自然な言語運用能力が身に付く
- 文章の理解スピードが上がる、なのでリスニング力も付く
- 基本的な単語やフレーズを自信をもって使えるようになる
多読により、ドイツ語のセンスが身に付き、語彙力が上がります。また理解スピードの向上によって、リスニング力にも繋がります。ドイツ語習得に向けて、多読は外せないプロセスであることがご理解いただけたのではないでしょうか。
また、ご自身が興味を持てるテキストで取り組むことで、ドイツ語学習のプロセス自体が楽しめます。多読を通して、ドイツ語圏の文化に触れた、あるいは社会に対する理解が深まったなど、何等かの達成感があると思います。更なる学習意欲に繋がります。
皆さんのドイツ語学習が実り多きものでありますように!








