皆さんは、英語学習のために多読はされていますでしょうか。私は20代の頃にアメリカの大学院留学を目指して、まずはTOEFLやGMATといったテスト対策に取り組んでいました。ですが、テスト対策ばかりでは味気ないですよね。
語学学習の目的は、その言語を通して他の国の風俗や考え方、新しい観点に触れるような極めて文化的な行為のはず。(ビジネスや勉強、研究のため、といった方もいらっしゃるかと思いますが。)やはり英語で何かを読んで楽しむ事も取り入れると、学習のモチベーションになります。
また、大量の文を読む多読は、第二言語習得論という研究分野でも重要性が指摘されています。今回は、語学学習における多読の理論的な効果と、私が多読に取り組んできた経験からのお薦めの本をご紹介します。
語学学習における多読の効果
多読とは? その基本概念
多読では、大量の文章に触れて英語に慣れ、言語運用力を高めることができます。私は昔、語学学習では文法というルールと単語という材料を大量に覚えれば、作文や会話ができるようになるのでは、と単純に考えていました。ですが、そう簡単にいかないのが、語学の厄介であり、面白いところでもあります。

日本語もそうですが、言語には文法や単語のルール通りの使用とは逸脱した使い方や、場面ごとに相応しい表現などが大量にあります。文法や単語を学習する以外に、大量の文章に触れて自然な表現を身に付けていく必要があります。
多読では易しめでスムーズに読めるテキストを選んで、とにかく大量に読み進めていきます。知っている単語が98%程度のものを選ぶと良いと言われています。途中で分からない単語に出会っても辞書は使わず、とにかく読み進めて量をこなします。
(でも、ある単語の意味が分からないと前に進めない、という場合は辞書で調べます。)
私自身は20代の頃、学習進捗を焦るあまり多読用に難解なテキストを選んでいましたが、見事に挫折しました!難解なテキストは精読のために取り組み、多読は易しいテキスト、と使い分けると良さそうです。まずは絵本でも漫画でもゴシップ雑誌でも易しめのテキストなら何でも良いです。
英語学習での多読の効果
それでは、第二言語習得論で指摘される多読の効果について、簡単に説明させていただきます。上記に多読により自然な表現に触れる必要性について記載しましたが、それ以外にどのような効果があるのでしょうか。
● 大量に読みこなすことで、文の理解スピードを上げる!そして、リスニング力も付く
大量に英文を読むことで、読むスピードが上がっていきます。これは読解だけでなく、リスニングにも有利です。というのは、リスニングができないという場合に、音が聞き取れていないというだけでなく、ネイティブが話す速さに理解スピードが追いつかないという理由も考えられます。会話のためにリスニング力を付けたい方が多いと思いますが、そのためにも多読は必須です。
● 基本的な単語やフレーズの運用能力が身に付く
多読をしていると常用の単語に何度も出会うことになります。動詞で言うと、例えば、have、take、makeなどでしょうか。常用の単語ほど多様な意味を網羅しています。こういった単語に何度も出会うことによって、単語の核となる意味がイメージできるようになります。これにより、自信をもって会話でもこれらの単語を使えるようになります。
第二言語習得論で指摘される多読の効果詳細について、宜しければ↓こちらの記事もご覧ください。

おすすめの多読本
私がこれまで多読で取り組んできた本の中で、お薦めのものをご紹介します。学習目的で作られた多読用テキストが色々とあるようですが、やはり自分で興味がある本を選んだ方が、「内容を知りたい」という意欲がわきますし、本の中で出会った単語も覚えられる気がします。そして、折角、時間をかけて本を読むなら、大人にとっても読み応えのあるものを選びたいですよね。
- アメリカの社会派SF漫画
アメコミの中でも、アメリカの社会問題を背景としたSF漫画は読み応えがあります。読んで面白いだけでなく、英語のニュース記事を読むための生きた英語表現が学べると同時に、現代のアメリカを理解するのにも役立ちます。
● Bitch Planet
近未来、男性優位の社会に「従順でない」とみなされた女性たちが、宇宙の流刑地、通称「ビッチ・プラネット」へ強制送還されるディストピアSF。トランプ政権誕生前後のアメリカにおけるフェミニズム運動や人種差別の高まり、さらには民営化された刑務所ビジネスへの批判が反映されています。現代のジェンダー論や政治的なプロテストで使われるリアルなスラングや専門用語が出てきます。
● Transmetropolitan
90年代後半から連載され、現代のアメリカ政治や「フェイクニュース」の蔓延を完全に予言していたと言われるSFです。メディアの腐敗、政治選挙の闇、大衆の思考停止、資本主義の暴走が取り上げられています。
● East of West
南北戦争が終結せず、アメリカ大陸が7つの異なる国家(連邦、旧南部、中国系、ネイティブアメリカンなど)に分裂したまま、ディストピア的な近未来を迎えたという「歴史改変SFウェスタン」。アメリカの建国史、今なお続く根深い「分断」、そしてアメリカ社会の根底にあるキリスト教的な「黙示録(終末論)」の思想がベースになっています。
- 日本の漫画の英語版
日本の漫画を英語で読むのもお薦めです。日本の漫画はエンタメとしての完成度が高く、先が気になって英語でもとにかく読み進めたくなります。絵が理解を助けてくれるので、単語のニュアンスを理解するのにも最高の素材です。
また、文量は小説ほど多くないので読破し易く、「一冊分のストーリーが理解できた」という達成感から、「もっと読もう」というモチベーションに繋がります。
有名な漫画の場合、英語版も日本のアマゾンで買えるようですね。「攻殻機動隊」は89年に連載が始まった漫画ですが、電脳化技術が発達した近未来に、サイボーグやアンドロイドと人間のそれぞれのアイデンティティの境界が曖昧になっていく様子が、現在を予想していたようでゾクゾクします。
- Animal Farm ー George Orwell (動物農場 ー ジョージ・オーウェル)
ご存知の通り、ジョージ・オーウェルの名作です。全体主義による恐怖政治を批判する内容ですが、農園の動物達の物語なので、単語は意外と易しく中級くらいで十分読めると思います。図らずも体制側に立ってしまう動物、あるいは搾取される側の動物など、それぞれの在り様が生き生きと描かれます。
私自身、この説に英語で挑戦してみて、内容が理解できて楽しめたという実感が、また次の本を読みたいというモチベーションに繋がりました。思い出のある作品です。
- The Tipping Point ー Malcolm Gladwell (ディッピング・ポイント ー マルコム・グラッドウェル)
こちらは小さな変化が閾値を超えて大きな変化となる現象を纏めた社会学的な内容です。売れなかった物が何かを切っ掛けとして爆発的に売れ出す、といった現象も扱っており、ビジネス書としても有名な本です。
ニューヨークの犯罪率が5年間で60%以上も減った事例などを取り上げ、世の中の不可解な変化の背景にある原則を探ろうとする意欲的な内容です。複雑系理論の入門編とも言えるかもしれません。
如何でしたでしょうか。私の本棚には今もこれらの本が並んでいますが、英語で挑戦して実際に内容を楽しめたという思い出があり、宝物を見ているような気になります。皆さんもご自身が興味のある本を選んで、多読を試してみて下さい。
まとめ
多読では易しめのテキストを大量の読みこなして、英語の運用力を上げるアプローチです。毎日30分、あるいは1時間などと決めて続けていると、2~3か月ほどで効果が実感できるのではないでしょうか。私の場合も理解のスピードが上がり、文章の方から勝手に目に飛び込んでくる感覚がありました。
また、多読では言語を通して文化に触れるという、語学の最大の醍醐味が味わえます。語学学習では成果が実感できるまでに時間がかかります。その間のモチベーションを保つためにも学習自体を楽しむ仕掛けが必要だと思います。多読はモチベーションの維持に最適なツールではないでしょうか。
皆さんの英語学習の時間が充実したものでありますように!








